明治5年から水戸市内で営業を続ける老舗高級料亭『山口楼』が、大洗で山口楼に負けないぐらいおいしい料理を食べられる宿がほしいという客の要望に応える形で開業したのがこの『大洗山口楼』だ。外観ひとつ見ても風格があり、自ら高級料亭旅館と名乗るだけあるなと妙に感心する。ゆっくりと寛ぐための宿ではあるが、背筋を伸ばしたくなる緊張感が逆に心地良い。期待に胸をふくらませて暖簾をくぐる一瞬がすでに贅沢な時間なのだ。

『大洗山口楼』というと新鮮な魚介類やブランド牛の常陸牛を目の前で焼いてくれる鉄板焼の『潮焼』で知られているが、他の料理を見ても老舗料亭の実力が存分に発揮されている。他では簡単には真似出来ないであろう醤油仕立てのアンコウ鍋や見た目も美しい一流料理人による手の込んだ料理の数々。食した人に感動を運んでくれる至高の料理だ。宿泊せずに料理だけを注文することも出来るので、時間を見つけてちょくちょく訪れたいと切望してしまう。

『大洗山口楼』は名門ゴルフクラブとして全国に名を馳せる『大洗ゴルフ倶楽部』まで徒歩3分のところにある。お隣りの敷地がもうゴルフ場なのだ。そのため宿の顧客にはゴルフ客が少なくない。宿が提供してくれるおいしい料理とゴルフを目当てに大洗の地を訪れる人が大勢いるのだ。ゴルフ場の予約もしてくれる。松林に遮られて海は見えないが、耳をすませば波音が聞こえてくる。潮の香に誘われながら、海までの道を散歩するのもおすすめ。

隙なく和服を着こなす若女将の山口祐佳さん。生粋の大和撫子かと想像してしまうが、老舗料亭の後継者としてイギリスで帝王学を学び、趣味は乗馬というアクティブな女性だ。話をすると優雅な立ち居振る舞いの中に秘められたエネルギッシュな魅力を感じることが出来る。政財界の大物や有名小説家などが顧客として名を連ねる『大洗山口楼』。若女将による自然体のもてなしが新しい風となって吹き込まれ、この宿をより魅力的なものに変えていくに違いない。