創業100年、6代続く老舗の割烹旅館。現在の建物は平成元年に建てられたもので、当時としても他に類を見ない洒落たデザイン建築だったが、東日本大震災を機に改装。耐震性の強化に加え、より機能性とデザイン性を重視した和モダンな造りに生まれ変わった。客室から洗面所、壁紙にいたるまで、各部屋やフロアごとに様相を変えるため、歩くだけでも楽しい。「かみさんを連れて来たら．．．」喜ぶ笑顔が、すぐに浮かんだ。

「さかなや」と名のつくとおり地魚を中心とした魚料理が堪能できるこの宿では、割烹旅館ならではの板長こだわりのひと皿を楽しみたい。冬はなんてったって名物あんこう鍋だ。マイルドな味噌味で臭みもなく、あんこうや野菜の出汁が効いたシメの雑炊は必食。また、朝食は30年も前から土鍋で炊いた鯛めしが出されていて、朝からもう贅沢な気分。ボリューム満点で食べきれなくても、残ったら女将さんがおにぎりにしてくれるから大丈夫。これがまた、冷めても旨いのなんの。

新館の最上階にある大浴場は、シックでスタイリッシュな造りながら広々としていて開放感抜群。大きな窓からは明るい陽が差し、疲れた体を癒しつつ、ただただボ～っと湯に浸かっていたくなる。眼下には大洗の街並みも一望できて、「さぁ、明日はどこへ行こう」と思い巡らせるのも楽しい。よし、明日のことは明日また朝風呂に入りながら考えよう。

老舗の割烹旅館と聞くと、何やらこわもての料理人が出てくるのではと思ったら、こちらの６代目のご主人・大里さんは物腰柔らかで気配り上手。いかにも親しみやすい近所のおじさんといった風情だ。また、女将さんをはじめとする女性スタッフ陣の明るい笑顔も花を添え、宿を去る時の満足感といったらこの上ない。三世代で通う常連客がいるのも納得だ。