春は鹿島灘のはまぐり、夏は岩牡蠣、秋は戻り鰹、そして冬はあんこう。春夏秋冬それぞれに至福のご馳走が待っているから、いつ訪れるか迷ってしまう。明治初期より続く老舗だからこそ、長年の歳月で培った卸業者との信頼関係のもと日々最高の食材が手に入るとか。その時期ならではの地魚や茨城の特産品を盛り込んだ料理は、毎度のことながら驚きと感動に満ちている。食べきれないほどボリューム満点だが、あまりの美味しさに完食してしまった。

茨城が誇る銘柄牛・常陸牛を石焼きで。好みの加減に焼いて、味付けは塩をほんのひとつまみ。口の中にじゅわーと広がる肉汁に、あぁ出来ることなら溺れたい。鹿島灘産はまぐりも、地魚のお造りも、煮魚も揚物も、素材本来の味わいが分かるよう調理はいたってシンプル。シメには大洗産しらすの釜飯までつく豪華さで、とことん茨城の豊かな食材が味わえる。初めて大洗に訪れたならこのプランがオススメだ。恐るべし常陸国！

曲がり松商店街の中心地にある「肴屋本店」。2012年より放送されたTVアニメ「ガールズ＆パンツァー」第４話では宿名・外観そのままに登場し、戦車がカーブを曲がりきれずに玄関に突っ込んだという衝撃的シーンで、全国にその名を轟かせた。今ではファンの間で聖地巡礼スポットとしても有名だが、ガルパン抜きにしても商店街散策の拠点に絶好の場所だ。個性派揃いの店主が営む商店の数々は、知れば知るほど奥が深くて面白い。若旦那にオススメスポットを聞いてから出かけたら、楽しさ・驚き・感動すべてが倍増だ。

7代目の若旦那・大里明さんは、とにかくフットワークが軽い。ガルパンによる街おこしにも当初からイベントや広告活動を立ち上げ精力的に活動し、その甲斐あって今では大洗町商工会全体が脚光を浴びるまでになった。反面、地元の人々との触れ合いも大切にし、大里さんが歩けば誰もが声をかける人気者。料理に関しては「その道を極める」と都内有名店で修行。割烹旅館の名に恥じない腕前の持ち主だ。大洗は彼のような若き後継者たちによって、伝統と新しさが共存する町へと進化したようだ。