県指定文化財であり、航海安全の神を祀る古社として大洗の町を厳かに見守る大洗磯前神社。その二の鳥居と呼ばれる、海に向かって構える大鳥居を正面から仰いでふと右手を見ると、そこに「いそや」がある。客室からはけして大きくはないけれど、3代続く磯料理自慢のドライブインとして定評があり、駐車場には大型バスが連日のように乗り付ける。また夏の海水浴はもちろん、水族館やアウトレットなどのレジャー施設にもアクセスの良いことでも人気のようだ。

広々とした食事処は、20名～100名までの団体を受け入れ可能。バスツアーでの利用も多く、県外のリピーターも増やしている。「いそや」という宿の名の通り、頂けるのは四季折々の新鮮な海の幸。現在は料理歴25年のご主人がみずから腕をふるっている。特に冬限定のあんこう鍋は、伝統のドブ汁をベースにしながらも丁寧な下処理で臭みもなく上品な仕上がり。肝のたっぷり入った濃厚なスープは、シメの雑炊までしっかり味わい尽くしたい。

足の悪い高齢者用にとテーブル席に改装した玄関脇の倉庫が、散策途中の休憩所として一昨年の夏、新たにオープン。誰ともなく持ち寄ったこの宿のキャラクター「澤 梓（さわあずさ）」関連グッズや記念品などが部屋中を埋め尽くし、いつしか聖地の一つと数えられるようになった。このアニメを全く知らない者でも、眺めているだけでこの世界に引き込まれてしまう。大洗でなければ、こんな出会いはなかっただろう。

ご主人の照沼修さん。もの静かで穏やかな人柄ながら、創業当時からの自慢である磯料理に対するこだわりはもちろん、大洗の歴史やガールズ＆パンツァーに関する知識も並々ならぬものがある。ガルパンに関する面白エピソードを聞くだけでも一晩明かせそうだ。