創業は昭和40年。現在は女将さんと数名の女性スタッフで調理から接客、掃除にいたるまでを取り仕切るアットホームな旅館だ。一見、民家のようなこじんまりとした建物ながら、平日は常にほぼ満室状態。特にビジネスで長期滞在される客がほとんどで、その訳は何といっても居心地の良さに尽きるだろう。仕事を終えて戻ってくると、女将さんの温かい笑顔と美味しいお手製料理が待っている。まるで実家に帰ってきたような気分だ。

しっかり味の染みた煮物や青菜の和え物、鶏肉のソテーに刺身、焼き魚、熱々のお味噌汁に炊きたてごはん…。どれも素朴だけど、ほっこりするようなおふくろの味。派手さは無いものの、一品一品に女将さんの愛情が感じられる。特に肉じゃがなどの煮物や厚焼き玉子などは、これを目当てにリピートする常連客も多いとか。連泊客のために、料理は日替わり。少し贅沢なプランにすれば、常陸牛の陶板焼き、ホタテや特大海老の塩焼きなども付く。

大洗水族館へは徒歩5分ほど。飼育員の研修生もよく泊まりにくるほどの近さだ。少し足を伸ばせば海鮮市場などもあり、天気の良い日はブラブラと海岸通りを歩くのも楽しそうだ。1日で回れなくても、連泊という選択肢があるから嬉しい。雨が降ったら思い切ってどこにも出かけず、無料貸出の囲碁や麻雀をして過ごすなんてのもアリかも知れない。

30年ほど前からこの宿を取り仕切る女将の木村洋子さん。2人のお子さんを育てながらの旅館経営はとにかく大変だっただろう。しかし、そんな苦労はこれっぽっちも見せず、いつもニコニコと宿泊客を出迎えてくれる。好き嫌いのある客のためにメニューを試行錯誤したり、汚れた作業着を洗ってくれたりと、まさに大洗のお母さん的存在。連日ほぼ満室状態なのもうなずける。